昨年末の紅白歌合戦に登場したAI美空ひばりについて山下達郎が「冒涜」とコメントしたことがニュースになっていました。
「冒涜」以上に具体的なコメントはなく、リスナーからの否定的な意見に同調しただけのことなんですけど、実は私も見ていた時に同じようなことを思いました。
CGが中途半端だったのはともかく(笑)、AIを駆使して再現したボーカルは確かにかなり美空ひばりっぽかったし、技術力に面では感心するばかりなんですけど、再現されたボーカルはあくまで「美空ひばりっぽい音」でしかなく、美空ひばり本人の声ではありません。曲間にあったメッセージも音は美空ひばりに近くても、実際に美空ひばりの想いから出た言葉ではなく、周りが言わせたかった言葉を音にしただけ。遺族も協力してるとはいえ、ご本人の意思を尊重してるわけではない、むしろ尊厳を傷つけてると言えるかもしれません。
それでもあのAIで感動した方も多くいらっしゃったようなので一概に全面否定まではしませんけど、なんか、クローン技術とか遺伝子操作とかのような倫理的に踏み入れちゃいけない神の領域を犯してるんじゃないかなーって感じたんですよね。
亡くなられた後も多くのファンがいるアーティストはたくさんいます。例えばジョン・レノンとか、石原裕次郎とか。仮にAIでジョン・レノンのボーカルを再現してジョンが作りそうな曲を作ってAIに歌わせたところでそれってなんか違うって思うし、CGとAIで石原裕次郎を再現した映画を作っても、やっぱりそれってなんか違うって思う。
別パターンとして、再結成が絶望的なBOØWYを布袋の作った曲でAI氷室に歌わせたら氷室は絶対「勝手なことすんな」ってなるでしょう。
亡くなってしまったのは残念だし、また声を聞きたいという思いもわかるけど、故人の尊厳を勝手に改変して疑似体験するのって自分勝手すぎるような気が。
そういう意味ではやはりAI美空ひばりは故人への冒涜ではないかと思います。