三億円事件を実行したのは私です

あ、私じゃないです(汗)

三億円事件が発生した1968年ってまだ私は生まれてませんので。

 

そういうことではなくて、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿された

「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」

という手記が話題になってるのです。

 

三億円事件は1968年12月に東京都府中市で起こった東京芝浦電気(現在の東芝)従業員のボーナスを積んだ現金輸送車(とは言っても普通のセダン)が奪われた事件。当時、世間を大きく騒がせた事件にもかかわらず犯人は捕まらず、未解決のまま現在は時効が成立しています。当時の三億円は現在の価値に換算すると10億とも20億とも言われ、貨幣価値では現時点でも過去最高金額とのこと。

三億円事件って結構な方がご存じですよね。この事件をモチーフとした映画やドラマ、検証番組なんかが度々作られてますので、若い世代でも事件の名称くらいは聞いたことがあると思います。私もさほど詳しくはありませんが大まかな概要は知ってます。

で、三億円事件は遺留品が数多く残されていたにもかかわらず犯人に辿り着けなかった謎の多い事件で、過去にも自称犯人が名乗り出たことがあったそうですが、結局今に至るまで真犯人は謎のまま。

そこに手記「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」が出てきたわけですよ。

私も手記を読んでみました。結末が早く知りたかったので最初はサラッと、内容を把握した上でもう一度読み返しました。

手記に書かれている内容は非常にリアリティがあり、ネットでも「真犯人じゃね?」と話題騒然。しかし投稿した「白田」と名乗る人物の素性が明らかにされていないことや、事件で明らかになっている事項からイメージを膨らませた創作である可能性もあることからフィクションと受け取る声も多々。

私はねぇ・・・うーん、わかんない(笑)

この手記が真実かどうかを判断するキーとなるのは、警察からも発表されていない「通常とは異なる手法で点火されたとされる発煙筒の点火方法」と「残されたジュラルミンケースに残されたあるモノの正体」の2つかと思いますが、手記にはこの2つの内容が明確に書かれており、警察が把握しているこれらの内容が合致するなら真犯人である可能性は高くなります。が、それも創作の内容が偶然一致したとなれば必ずしも真犯人とは言い切れず、2つのキーだけではなかなか判断ができないのかも。

しかし、フィクションだったとしても素人作家にしてはおもしろい内容だったと思います。

そして、私が気になったのはその2つのキーよりも犯行の「動機」です。学生運動が盛んだった当時を知らない私としてはその頃の世間の空気とか学生の思考とかはよくわからないのですが、手記に書かれている内容では動機らしい動機が具体的には書かれていません。抽象的に「熱量」という言葉が登場してますが、熱量というワードだけで三億円もの大金を強奪するなんて大犯罪を犯す動機とするのは私には違和感があるんですね。学生運動が過熱していく中で暴力行為や犯罪へエスカレートしていった流れはなんとなくわかってはいるのですが、それらも当時の若者の「熱量」として片付けるのはどうにも腑に落ちない。愛する女性と大金を奪うという目的がありながら、その先をまったく考えてない白田。若気の至りとしてもやはり「熱量」でそこまでするか?という思いが拭えません。

現在40代の私から見て最近の若い世代は元気がないなと思うことは少なからずあったりして、私が10代の頃は暴走族もいっぱいいたし、学校や家庭で暴力をふるう不良も多かった時代。それに比べたら今の若者は血気がないと言えるかもしれませんし、学生運動全盛期を生きた世代から見たら私ら世代も血気がないと見えるのかもしれません。その世代間ギャップを1968年当時にスライドさせたとしても、自分の置かれた環境や世の中への不満を解消するために大金を強奪するという方向に向かう感覚がどうにも理解できない。著者の息子さんも「全く持って意味不明」と述べたように、この「熱量」というワードは当時を生きた人でないと理解できない感覚なのかもしれません。

そういう意味でもおもしろい読み物で、戦後から自分の生まれる前までの時代背景にも非常に興味を引かれました。

まだお読みになってない方は一度読んでみてください。

 

で・・・・仮に手記が真実だとすれば、一番気掛かりなのは少年Sが死亡した真相です。関与したであろう少年Sの父親は年齢的に既に亡くなっている可能性もありますが、関与したのであれば少年Sの父親も真実を知っていたはずで、警察官であった父親が事件解決のための証拠を隠蔽したとなれば大問題。警察も失態を隠すために真犯人を逮捕しなかった可能性が出てきますが、それにしては事件後の捜査があまりにも長期で広範囲すぎます。

この手記の先に真犯人も知らない最後の真実があるのかもしれません・・・・。