パリでテロ、憎しみの連鎖

現地時間11月13日にフランス・パリで起きた同時多発テロ。

これまでに129人もの命が失われ、フランス国内だけに留まらず全世界に衝撃を与えました。

このテロではISがフランスによる攻撃に対する報復だと犯行声明を出しています。

 

言うまでもなくテロは絶対に許されることではない。

いかなる理由があっても人が人の命を奪う権利は誰にもない。

 

Facebookでは期間限定でアイコンをトリコロールにする機能が追加され、私の友人たちもトリコロールにして哀悼の意を表している人が何人もいました。

それは純粋に哀悼の想いからの行動でそれを非難するつもりは毛頭ないのですが、一方でフランスにのみ哀悼するのはどうなのかという違和感を持つ人も多くいます。

フランスで亡くなった129人よりも遥かに多くの命がイラクやシリアへの空爆で失われて、それはISの兵士だけでなく一般市民も多数含まれているし、中には誤爆によって亡くなった方もいます。

フランスでのテロは悲劇で、ISへの空爆は当然の報いなのか。

 

繰り返すようですが、ISの行動を擁護するつもりはないし、どっちが多く死んだからかわいそうとかって話でもない。

誰が死んでも悲劇は悲劇。

そこには悲しみしかないし、状況によってはその悲しみが憎悪に変わる。

 

こういうニュースを見る度に思い出すのがこちらのコピー。

ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました

出典 http://www.pressnet.or.jp/

「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました。」

これは2013年の新聞広告クリエーティブコンテストで最優秀賞に選ばれたものです。

私たちが一般的に知ってる桃太郎は「鬼を退治してめでたしめでたし」とハッピーエンドで語られていますが、目線を変えて自分の父親を殺された子鬼の立場で見てみればハッピーエンドでも何でもなく桃太郎は憎むべき仇でしかありません。

 

初めてこのコピーを見た時、私はハッとしました。

自分の価値観で正義と思っていたことが、実はそうではなかった。

そんなことがこの世の中には多く溢れているんじゃないか。

 

正に今、起こっている欧米と中東の問題も同じかもしれない。

今の世界は欧米主導で動き、欧米の価値観で判断されることが多く、日本で伝えられる報道も欧米の価値観に基づいて善悪の立場が決められていて、悪への攻撃は正当化され、善が攻撃を受ければ悲劇として扱われる。

しかし、目線を反対側に変えてみれば、正義のヒーロー桃太郎も悪魔になる。

私がもしイラクやシリアの市民で、欧米による空爆で家族が殺されたら自国の治安を良くするためという大義名分があったとしても、きっと欧米を恨むと思う。

 

今回のテロを受けて、フランス国内では反IS感情が高まるのでしょうか。

オランド大統領は強硬姿勢を示し、今日も早々にフランスによるISへの空爆が行われたというニュースがありました。

自国民がテロによって殺されて黙ってはいられないという気持ちも充分にわかるのだけれど、これ以上テロを起こさせないためにとやってる攻撃は、逆にテロを生む種を撒いているとこになってはいないか、そんな気がします。

憎しみが憎しみを生み、終わらない連鎖が続く。

一番の問題はどうして中東で過激派が出てきたかで、その原因を解決しないことにはこの問題は永遠に終わらないのではないでしょうか。

一方の価値観を押し付けて抑圧しても問題は解決しません。桃太郎には桃太郎の事情があり、鬼には鬼の事情があり、双方の価値観の違いを互いに認め合って、共存できる道を探ることこそが必要。

某携帯電話会社のCMみたいに桃太郎も浦島太郎も金太郎も鬼も一緒に笑っていられる世界が理想ですよね。

キレイ事の理想論、お花畑って言われるかもしれないけど。

 

パリのテロでは寿司店も被害に遭いました。これはたまたまなのか意図的なものなのかわかりませんけど、日本も欧米を支持する立場を取っている以上、テロの標的となるのは免れないし、いずれそう遠くないうちに日本国内でISによるテロが起きるかもしれません。

安部総理としてはむしろ日本でテロが起きて、国民の反IS感情を高め、存立危機事態として自衛隊を中東での空爆作戦に参加させることができれば望むシナリオとなるのでしょうか。

長い歴史の中で続く宗教対立や地理的な要因、天然資源など、一言で片付けられるほど単純な話ではないのだけれど、考えなしに欧米にくっついていくのではなく、宗教的に中立でいやすい立場をうまく使って仲裁への道筋を作っていくようなやり方はできないものでしょうか。

憎しみの連鎖を断ち切らねば。

 

亡くなられた方々のご冥福を祈ります。