永遠の0

永遠の0

百田尚樹氏が出ていたテレビを見て、そこで紹介していた彼の著書「風の中のマリア」を読みたいと娘が言い出したので、ついでに自分用に買った「永遠の0(ゼロ)」。

ひじょ~におもしろかったです。

いや、おもしろいって言っても愉快痛快ってことではなく、とても興味深く、同時に深く考えさせられた作品だったという意味で。

リリースからもう7年近くも経ち、既に200万部を超えるベストセラーになってるそうなので、読まれた方も多いでしょう。でも読んでない方もまだまだ多いと思うのでストーリーについてはここでは触れませんが、序章からラストへ向かう本筋のストーリーの秀逸さと同時に、そこに至るまでの各章で語られる宮部久蔵についての証言の数々が非常に奥深く、とにかく圧倒されました。

百田氏は一編の小説を書くのに200~300冊もの文献を調べるのだそうです。

デビュー作である「永遠の0」を書いた当時もそうだったかは定かではありませんが、宮部についての証言では非常に細かい描写まで語られており、恐らく文献だけではなく実際に戦争経験者とも会って話を聞いたのではないかと思われるほどに壮絶でリアル。もちろんこれは小説であってフィクションなんだけど、限りなくリアルに近いフィクションと言うか、ある意味ドキュメンタリーとも受け取れる内容でした。

読み始めはかつて日本が世界に誇った名戦闘機ゼロ戦に興味を引かれたのが、読み続けていくうちにいつの間にかあの戦争自体を強く考えるようになりました。

それまで第二次世界大戦についてはナチスがポーランド侵攻して、日本が真珠湾攻撃して、広島・長崎に原爆が落ちて・・・・くらいの浅い知識だったのが、一人の兵士がどのような心情で神風特攻隊として命を落としていったかを突き付けられたのだから、そりゃ~衝撃的ですよ。

そして・・・・・読みながらこの大戦時の日本と現代の日本がオーバーラップしていました。

実質的に拒否は許されない志願とは形式ばかりの特攻命令。
一人の兵の命をまるで使い捨ての駒のように戦地へ送る日本海軍。
負け戦の責任もとらず保身ばかりの上層部。

21世紀の現代の価値観で見ればありとあらゆる事が狂気としか思えない大戦時の日本。

でも、形は違えど本質は同じような光景・・・・いや、空気と言った方がいいのかな?そんなのが今の日本にもあるように思えます。

Twitterでは3.11以降の日本を「まるで戦時中だ」と言うツイートがよく見られるんですけど、戦争が終わってもう70年近くになるというのに、深い根っこはあまり変わってないのかもしれませんね。

もう70年経ったら今の日本も「あの時の日本は狂ってた」と思われるのでしょうか。

「永遠の0」が書かれたのは2006年で、3.11とはもちろん関係ないんですけど、所々に垣間見れる軍への不満を表す表現は百田氏なりの現代日本への警鐘のように感じます。もし3.11以降に書かれていたらまた違ったものになったかもしれません。

まだ読んでない方も、3.11前に読まれた方も、そんなことを思い重ねながら読むと感慨深いんじゃないかと思います。

あ、もちろんそんなの関係ナシに普通に読んでも最後は号泣間違いなしの名作ですよ。